激闘記録 第十章第1話「バトラーズギャラリー2010」



タミヤモデラーズギャラリー。
毎年夏に行われる、タミヤホビーファンのためのイベントである。
新製品やモデラーたちの作品展示、ジャンク市や限定品など、魅惑のグッズの数々。
会場である東武百貨店の開店時間を今か今かと心待ちにしている。

それなのに

それなのに…

カトリ「は、腹が…痛い」
あさがや「オレンジジュースうまいわ〜」
P-M「何なんだよ、この状況は…」

雰囲気台なし。
緊張感の欠片もない。
P-M「まず、カトリさん。どうなさいましたか」
カトリ「1時間で生中1、ジントニック2、いちごロック1、接着剤3はキツい…」
P-M「あぁ、昨日は飲み会だったのね。飲みといえば、あさがやさん。あなたのお手々に握っているものは?」
あさがや「オレンジジュース!あげないよ!!」
P-M「いりません。人を待たせた挙句、一人だけ飲み物とは優雅ですね」
あさがや「いやぁ、照れるなぁ」
P-M「褒めていないから」
カトリ「ジュース…うぷっ」
P-M「もういやだこの連中!」

そうこうしているうちに開店時間を迎えた。
青白い顔をしているカトリ、オレンジジュースを摂取し橙色に染まるあさがやとともに、
ブースが展開されている10階催事場へゆるりと向かった。



P-M「1/1ワーゲンオフローダーか。日本まではるばるお疲れさまでした」
カトリ「ハーゲンダッツ…うぷっ」
P-M「もうさっさと帰ってください。お疲れさまでした」
あさがや「そうだぞ。無理せず激闘からフェードアウトしろ。代わりにミジンコがレギュラーに昇格するから」
P-M「何いきなりとんでもないことを言い出しているの!あと、ミジンコって誰!?」

この展開からうすうす感づいているとは思うが、ツッコミを入れたときには2人の姿はなく。
お決まりのように販売コーナーで激しくも醜い争いを繰り広げていたのだった。





久しぶりの3レーンコース。
前年とほぼ同じレイアウトを前に、昨年の悪夢がよみがえる。
だが、この1年、ただ無意識にレースをこなしてきたわけではない。
成長したマシンを信じて走らせてみることにした。

P-M「イヤッホウ!スロープなんてなんともないぜ!!」

ドラゴンバックに散々苦しめられたからな。
これくらいのコース、余裕すぎるぜ!
ダメージが蓄積しないうちにさっさとマシンを回収することにした。

P-M「あれ?いないぞ」
あさがや「レーンチェンジャーで吹っ飛んでいたから持ってきたよ」
P-M「あさがや!いつの間に!?」
あさがや「ステルスモードだ」
P-M「そ、そうなんだ。スゴいね…」
あさがや「気になっているだろうから教えてやるが、カトリとの勝負は圧勝だった」
P-M「まぁあんな状態だからな」
カトリ「…オレは燃え尽きたぜ」

ホワイトスペシャルのように真っ白になっているカトリを横目に、LCをこえるためにセッティングを変更。
その場しのぎなので完璧には程遠いが、このまま黙って指を加えるのは性に合わない。

そして、レースの時間がやってきた。



スタッフ「それでは…レディ、ゴー!!」
あさがや「越前ーッ!!」

語るほどの見所もなく初戦敗退。
1対1というラッキーな組み合わせだったにも関わらず、完全なスピード負けであった。

P-M「不甲斐ない。次はカトリの番か」
カトリ「…ない」
P-M「え?」
カトリ「…エントリー…していない」
P-M「ど、どうして…!?」
カトリ「…体調が…」
P-M「くっ…。カトリは犠牲になったのだ」
あさがや「P-M、絶対に勝ってくれ!そうじゃなきゃヤツは浮かばれない」
カトリ「…オマエら…人を勝手に…」
P-M「弔い合戦だ!!」



スタッフ「3人とも揃いましたね。では、スイッチオン。レディ…ゴー!!」

3台でのレース。
我がマシンはスロープも難なく突破。
1位のスピードマシンとバンパー1個分の差で追う。
3台目は大きく出遅れ、1周目から先頭2台のデッドヒートとなった。

次はレーンチェンジャー。

大きく揺さぶられてフロントが浮く。
だが、今日は負けるわけにはいかない!
マシンに重力をかけるかの如く念をおくる。

P-M「…ッ!!」

多少バランスを崩しながらも、なんとか持ち直してクリア!
ピンチの後にチャンスあり。心なしか相手の顔に焦りが見える。

スタッフ「あ〜っと!1コースのマシン、ここでコースアウト!!」

激戦を演じていた相手のマシンがスロープでコース外に消えていった。
もう遮るものはなにもない。
ゴールラインを目指してひたすら走るだけだ。

スタッフここで2コースのマシンが!!
P-M何っ!?

完全にノーマークだった。
あんなに後方にいたマシンが追い上げてくるとは。






…というサプライズもなく、ひっそりとコースアウトしていた。



P-M、1位で予選突破!!


P-M「よし!」
あさがや「よかったね(怒)」
カトリ「…」
P-M「オマエらもっと祝福しろよ!」

ビッグイベントほどの規模ではないが、ついに予選を突破することができた。
忘れかけていた、久しぶりの感触。
次のレースも波に乗っていきたい。

スタッフ「それでは準決勝をはじめます」

準決勝!?
そうか、準決勝進出か。いい響きだ。
今までは

カトリ>(越えられない壁)>P-M、あさがや

だったのが

P-M>(準決勝の壁)>カトリ(笑)>(一次予選の壁)>あさがや

になったわけだな。
次勝つと決勝戦。あぁ、どんな賞品がもらえるのだろうか。今から楽しみだ。


スタッフ3コースのマシン、レーンチェンジャーでコースアウト!!

あぁ、やはり油断したり慢心したりするのは良くないね。

カトリ「いやぁ、残念だったな。スピードではブッチギリだったのにね。
あのままコースアウトしなければ勝っていたじゃん。わっはっは」
P-M「急に顔色が良くなりやがって。次回と言わず今回からミジンコとチェンジしろ」
あさがや「お疲れさまでした(喜)」
P-M「何だよその笑顔!頭からオレンジジュースかけるぞ」